「ゴジラ-1.0」ビハインド・ザ・シーン image

「ゴジラ-1.0」ビハインド・ザ・シーン ZBrushを使用して象徴的な怪獣を再構築。

ゴジラシリーズ70周年にあわせて、「ゴジラ-1.0」が劇場公開され、日本だけでなく海外からも絶賛の声を集めている。本作は2016年の「シン・ゴジラ」以来、日本で製作されたゴジラ映画の新作で、第二次世界大戦の破壊から立ち直ろうとする日本を舞台にしたゴジラのオリジンストーリーだ。

監督の山崎貴氏とモデラーの田口工亮氏に「ゴジラ-1.0」と、この作品で恐ろしい怪獣のデザインにおいてZBrushがどのように使用されたかについて、お話をお聞きした。

山崎監督: そうですね。ゴジラ・ザ・ライドというのをやった時に結構あの究極のゴジラ作ろうと、田口君と一緒にかなり追い込んだので、新しいゴジラを作るっていう作業は、ゴジラ・ザ・ライドの時にやっていました。何が正解なのか探る時間はすごくありましたけど、最終的には、ゴジラ・ザ・ライドのゴジラが一番いいんじゃないかと、結論を出すまでが大変でした。

今までの作品で本当に様々なゴジラがあるんですが、「This is ゴジラ」というか、みんなの共通項のゴジラでありながら、さらにカッコよくて恐ろしいっていうものを目指したという感じですね。だから形は前傾じゃなくて、垂直に立ってほしかったですし、足もすごく太いというか立派で全体的に、山の形をしています。そこをちょっと意識して下半身をすごくマッシブにしたり、顔もすごく恐ろしいけど、これはゴジラだなっていう顔にしたり、ゴジラの造形に対するアプローチの中心にあったのは、「This is ゴジラ」ということでしたね。

山崎監督: 大戸島の漢字の呉爾羅と書くのですが、恐竜の生き残りがすごく再生能力が強くて、ずっと一代ではないと思いますが、いまだにそれが生き残っている。それがクロスロード作戦の核で焼かれても再生能力がすごく強いので、再生して再生してとやっているうちに暴走してゴジラになってしまったというイメージなんです。

大きいゴジラになってからは、モンスター兼神様みたいなまあまあ和製ゴジラなので、すっくと垂直に立つっていうことをかなり意識してやりました。CGなアプローチで言うと、あの大戸島の呉爾羅は恐竜の表現として筋肉シミュレーションをやっています。大きいゴジラの方は筋肉シムやるとどうしても動物感が出てしまうので、あえて筋肉シムやらずに、ボーンの動きだけでの動きだけでアニメーションつけて変えています。

山崎監督: 僕がZBrushで荒い3Dマケットを作ったやつに、田口君が更に色々独自の進化をしてくれて、田口君が3D彫刻家というか、モデラーとしての感性でまた色々バランスを少し変えたりとかしていきながら、さらに凄まじいディテールを付けています。僕は、アーティストとしての田口君は本当に信用しています。数億のポリゴンを扱ったため、モデルはRedshiftでレンダリングするためにかなりの枚数のディスプレイスメントマップに変換する必要がありました。モデル自体はわりと軽いものにして、アニメーションをつけて、いろんなマップを貼って最終的なレンダリングをRedshiftでやるっていう流れになります。

田口氏: 私たちはマケットをリトポロジーし、最終的なディスプレイスメントマップにMudboxを使用しました。レンダリングはMayaとRedshiftを使用してモデルを完成させ、監督の意見を取り入れながら当初のデザインを改良しました。

田口氏: 映画モデルでは、承認段階まで主にSculptris Proを使用し、その後ディテール化のためにリトポロジーを行います。私の主なZBrushブラシはStandard、Dam Standard、Inflate、Moveなどで、カスタムアルファとVDM(ベクター変位メッシュ)ブラシも使用しています。

山崎監督: 僕は、マケットというか、ラフな状態で急いで作らなきゃいけない時が多いので、3Dの情報が入ったカスタムのIMMブラシを使います。怪獣ブラシのセットを作ってあって、それでディテールをつけていくと、ある程度みるみるうちにディテールが付くので、すごく役に立っています。あとは、UV自動的にグループ化しておくと、UVを自動的に開いてくれるUVマスターですね。あっという間にものを作らなきゃいけない時には、すごく助かっています。

あとは、ハードサーフェイスだけど、曲線でできているようなものを作るときに、マスクを書いてポリグループで分けるときれいな3次元曲面が自動的にできる機能を好きで最近よく使っています。宇宙人の宇宙船を作ると、非常に早く良いものができるので。

田口氏: 僕はハリウッド版のゴジラを結構見ていて、ハリウッド映画のクリーチャーは目が小さいです。本物の生き物の目はたいてい小さくて、着ぐるみのゴジラの目は相当大きくて、かなり特徴的な形をしています。監督からいただいたマケットも、日本のゴジラの目の形をしていたんですが、どうしても可愛くなってしまうので、最初は小さく、ワニのような目もしていましたが、最終的には少し人間らしいアーモンド形に落ち着き、それが適切な恐怖感を与えることになりました。

山崎監督: カメラがどこに寄るかは、ある程度予想して作るんですけど、でもどこに寄るかっていうのが絵を作ってみるまでは分からないので、かなり寄っても大丈夫なディテール量のゴジラを田口君が作ってくれたので、大きいゴジラそのものが丸ごとあのディテールを持っています。

山崎監督: 本作は、ZBrushをはじめとするスカルプトソフトを研究してクリーチャーを作るっていう研究の最終成果みたいな感じですね。CGの中で実写っぽく見えるクリーチャーって相当腕のいい人がいたのだと思います。「ジュラシック・パーク」の恐竜とかってちょっといまだにどうあれができたのかよく分からないんです。

すごく民主化してくれたのがZBrushかなと思っています。ああいったものを、普通の我々でもできるようになったというか、モニター上で粘土細工ができるようになったっていうのが、ZBrushというソフトが本当に革命的だったなと。デジタルツールを使うと、本来だったら通らなきゃいけない道筋を、飛び越した状態で最終形態近いものというか。形状を伝えるためには非常にいいものが中間に出てくるという感じがします。

最終的な映画のちょっと前の段階のものが目の前で出来上がっていくというのは、やっぱり監督としてはありがたいです。ZBrushは、頭の中を直接取り出すツールとして非常に優れているなという風に思っています。ジェームズ・キャメロンとか自分でデザインもするからZBrushを覚えたら大変じゃないですか(笑)。


宮田敏英は、Maxonのマーケティング・サポート・スペシャリストです。