ジュピターと共に image

ジュピターと共に Territory StudioのDavid Sheldon-Hicksにウォシャウスキー姉弟の大作のへの参加についてDuncan Evansがレポート。

伝説的な監督のウォシャウスキー姉弟は、ジュピターに出てくる宇宙船にモニターグラフィックスを使うに当たり、最初にロンドンにあるTerritory Studioに電話をした。リドリー・スコット監督のプロメテウスで、同様のエフェクトを手がけたクリエイティブディレクターのDavid Sheldon - Hicks氏が選ばれたのは必然だろう。宇宙船のナビシステムの機能の一部のユーザーインターフェースを制作のために、Territoryの正式に参加が決まった。重力やワームホール、迷彩機器など眼に見えない効果を視覚化するに当たり、ジュピターのプロダクションデザイナーであるHugh Bateup氏はまずは3D天気図から始めることを提案したという。それから、コンセプトアートとして、美しいアートの部屋の全体、リフト、宇宙服、環境、宇宙船があった。作成済みのものからインスピレーションを得て、ビジュアルや映画の雰囲気を作り上げ、オリジナルのフォントデザインまでTerritoryで制作したのだ。

David氏と彼のチームの5人のアーティストは、等圧線(天気図に使用される)を3Dのエネルギー領域を有機的な形状にする方法を調査。ほとんどのエフェクトは、Cinema 4DのXPressoで操作するThinking Particlesを使って制作された。基本的なアイデアとしては、100〜1000のパーティクルを生成してそれをエフェクタで動かしている。この方法であれば、天気図上にある特定のストーリーポイントで力場を作成できるためだ。通常、この種のアニメーションは、混沌するエレメントを作成するが、こうしたエフェクトを組み合わせることにした。問題が発生したのは、特定のアニメーションがループすることだった。この問題をどのように解決したかDavid氏は次のように解説してくれた。「Cinema 4DのMoGraphのトレーサーとヘアシェーダの設定により、渦になるワームホールのグラフィックスに関するループの問題を解決のヒントになりました」

他の問題は、宇宙船のブリッジにある実際のスクリーンの不規則性や補間をどうするかだった。このプロジェクトは、後からハメコミ合成をする他のVFXプロジェクトと異なり、実際のガラスのスクリーンにリアルタイムで投影している。投影については、セットにグラフィックを載せるエンジニアで、パートナーでもあるCompuhireの協力を元に解決した。

プロジェクターは床や天井に配置した。これはTerritoryがプロメテウスで同じようなエフェクトを行った経験からだ。宇宙船のブリッジには、5つのメインコンソールがガラスシートに少し傾けて掛けられた。グラフィックそのものは、視認できる程度の濃度を持ちながら、その向こうの俳優が見える必要がある。これをDavid氏はどのように解決したのだろうか。「ガラスに投影しますが、特別なアセテートを遣うことで、表面が不完全になり、光線がわずかに屈折と反射することで、光が少し後ろに漏れることで少し明るくなります。リドリー・スコットはこの光の漏れが好きで、プロメテウスでも使っていました」

ジュピターでは、グラフィックアニメーションを角に沿った完璧な位置にあることを望みましたが、スクリーンはタイリングされていたため、各プロジェクターからの投影角度が90°にならないように傾けて設置され、投影イメージは湾曲してスクリーンに投影されました。試行錯誤の上、歪みの補正にはAfter Effectsを使った。「私たちは、実際のセットの歪みとは、逆に方向に歪ませることで、最適な結果が得られました。いくつかのパネルには、幾何学的なデザインがエッジングされていたため、動的な投影に物理的なガラスエッチングが混在することになります。これにより、3Dセットデザインとアニメーションの投影の混合がいい結果を生みました」

俳優や監督にとってよかったのは、実際にスクリーンが見えるという点だ。すべてグリーンスクリーンだった場合と比べると歴然だ。反射や光の混ざったり、漏れたりするので、よりリアルに見える。

ウォシャウスキー姉弟は、撮影前は従来通りすべてのグラフィックはグリーンスクリーンで撮影して合成するつもりだったという。しかし、テストを見た後は、彼らはすべてのグラフィックを投影することを望んだという。つまり、変更やデザインは彼ら自身に任されるということだ。「ウォシャウスキー姉弟との仕事は非常嬉しかった、セットでの作業もエネルギーをもらいました。モーションデザイナーのNik HillとRyan Haysは、デザイン、アニメーション付け、レンダリングをその場で行い、Mila KunisとChanning Tatumは、それをすぐに投影しました。LanaとAndyからデザイン変更をもらい、次のテイクまでに修正しました。非常に大変な作業でしたが、その一方で非常に楽しく、俳優と監督と一緒に確認できたことに満足しました」

これは、Cinema 4Dがアーティストフレンドリーだったからこそ実現したと言える。デザイナーという経歴を持つTerritoryのチームには、常に専門知識が必要性はなかった。C4Dのツールは、基本的なルックをすばやく作れ、監督のOKをもらった後1〜2日で詳細なディテールを加え、エフェクトを洗練させて美しく仕上げられるのだ。「このソフトウェアは、大雑把に作成してディテールを加えていくのに完璧なツールです。私たちは数えきれないほどのUIのインターフェイスを大量に作成して、IllustratorやAfter EffectsといったAdobe製品に持っていく必要がありました。そして、C4DとAeのカメラを切り替えて何度も行ったり来たりしました。ソフトウェアの工程を一定の共通作業にすることで、翌日の撮影までに30〜40のスクリーンを作成できました。通常、こうした作業には、1〜2つ分のメインのスクリーンを作成するのに、2週間ほどかかります。監督からOKをもらってからそれを元に40のスクリーンを作成します。決して楽しくはありませんが、すばやい決定と自分の限度を見極めるのです」

最終的には、Territoryはジュピターに関する作業を4ヶ月間かかった。約20分間の2kのビジュアルのレンダリングには、Mac 3.5 GHz6コアのワークステーションを使いました。「C4Dは、いい結果をすばやく得るのに良いツールです。ツールの正しい組み合わせにより、映画制作の現場でも高い環境を維持できました。俳優がくるまでに準備ができている必要がありましたが、C4Dはすごいのでそれを実現できました」


ジュピターに関するグラフィックはこちらでもご覧いただけます:
www.territorystudio.com


Author

Duncan Evansフリーライター – イギリス