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オフロードバイクの試乗をVRで! 「GODSPEED FREE RIDE +」VRシステムアセット作りにCinema 4Dを活用

GODSPEED FREE RIDE +」は、バイクに乗ったことのない人、二輪免許のない人、そういった方々でも安全にオフロードバイクに乗る楽しみを味わうことができる、本物のバイクを使った体験型VRシステムだ。昨今、デジタル関連やキッズ向けイベントではVR、ARシステム展示はよく見かけるが、大人が本格的に臨場感やスピードを体感でき、なおかつマーケティングツールとしてビジネスにつながるシステムはまだ少ないと言っても過言ではない。

「GODSPEED FREE RIDE +」システムを開発・制作したPrototype社は、2016年の先端技術展に出展。

連日長蛇の列を作り、延べ800人がこのユニークな試乗システムを体感した

2014年パシフィコ横浜にて開催された”Yokohama Hot Rod Custom Show2014” で、ソルトレイク、ボンネビルソルトフラッツで行われる世界最速を競うレース「ボンネビル・スピードウィーク」を再現したVRとバイクを実際に連動させるシステムを初めて制作し展示を行いました。その時は映像で臨場感を伝えるようにデザインしました。翌年には「HARLEY-DAVIDSON 」社からJumpstartと呼ばれる、バイクを固定したままエンジンを実際にかけて実車そのままに走行できる試乗システムに対し、共同でVRをプラスした試乗システムを開発にするに至りました。

車やバイクのイベント会場で試乗を体験する人はVRの知識を持った人とは限らない。VR試乗システムは、あくまでも1つのマーケティングツールです。システムの対象者は、純粋にバイクに乗ってみたい、乗ってみたいけどなかなか機会がない、免許を持っていないけどバイクに憧れている、そういった方々が多い。VR試乗システムで満足して、本物のバイクに興味を持って、最終的にはバイクを購入していただきバイクに乗る楽しさを提案すことが目的です。

今回の「GODSPEED FREE RIDE +」は美しくも危険な道を走り抜けるエンデューロレース体験をするのがテーマ。美しい渓谷を望みながら、切り立った崖の上を駆け抜けていき、ゴールを目指します。バイクで過酷な道を走るスリルや、気持ち良さを追求し、コースの工夫やオブジェクトの作り込み、更には路面のデコボコや渓谷から吹く風にいたる所までリアルな体感が出来るよう拘りました。そして、このデコボコ道を走る時の振動が面白い。それにはコースに工夫を凝らす必要があったり、ポイントとなるオブジェクトの作りこみが重要でした。

オフロードバイクの特性を生かし、疾走感ではなくトレッキング感を重視した地形作りをしました。バイクで走る道の標高を高くし過ぎると視界に何も入ってこないので高さを感じない。低すぎるとドキドキ感が出ない。視野の上にも下にも崖や道が見えるほどよい高さを見つけながら地形をモデリングしています。このシステムは敵キャラが出てくるシューティングでもなくスピードを競うゲームでもない。バイクの乗り心地や楽しさを体験してもらうシステムということを念頭に置いて単純なコースにならないようにしています。また、急カーブで道が見えなくなることがないよう注意しながらフィールドもオブジェクトも制作しています。制作ツールはCinema 4Dです。

シーンに出てくる橋は、ポリゴン数の少ないパーツをMoGraphのクローナーを使って試作しました。それらを物理演算で揺れたり崩れていく様子をシミュレーションで何度か検証しました。

弊社では早速Cinema 4D R18を導入しました。新機能のボロノイ分割はとてもリアルにオブジェクトを粉砕してくれるので、システムに組み込めば、走行中に崩れる岩や雪崩、地形の変化、天候の変化など、VR空間で起きるアクションを簡単に違和感なく追加できるようになると思います。今後、「GOD SPEED FREE RIDE +」をアップデートもしくは新しいVRコンテンツを制作する際には必ず実装をしたいと思っています。

弊社でCinema 4Dを導入したきっかけというのが、実は数年前に見たこの動画です。

『Maxon Cinema 4d - Red Bull Formula 1 (AixSponza and VFX Animation )

とにかくこのムービーがカッコよくて、CGでメカを作るならCinema 4Dだ!と。

ずっと使っていますが、デザイナーがデザインスケッチをするようにモデリングできる。デザイナーがアイディアをすぐに形にできる。それは今も変わらないCinema 4Dの利点です。

「GODSPEED FREE RIDE +」ではCinema 4DからFBXにエクスポートしてUnreal Engineで組んでいます。データのやり取りは全く問題ないです。このシステムでは、実車のハンドルやアクセル、ブレーキ、ギア、クラッチにセンサーを取り付け、操作をリアルタイムに反映させています。更にはUnreal Engineでの挙動を元に揺動装置やファンの風量を制御して体験のリアリティーを増しています。

VRゴーグルで揺れる映像だけを見てるとVR酔いが発生しますが、バイクに乗った身体の揺れと視界の揺れが連動しているのでVR酔いが少ないんです。酔いが少ないとは言え、映像のフレームレート維持とバイクの接地感の出すためのリアルタイムシャドウは徹底しています。この2点がしっかりしないと求めているリアル感は出ない。地形のデータを何度もテストして最適なバランスを見出しています。

このVR試乗システム「GODSPEED FREE RIDE +」を体感した人たちは、みな夢中になってバイクを操作していました。それはとても嬉しいことです。でも、このVRで体感したことを通して、本物のバイクに乗って走る楽しさを感じていただくことが本当の成功だと思っています。

Prototypeはデジタルとアナログを組み合わせるコンテンツ制作を得意としています。

これからはバイクや車を使った、あり得ないぐらい精巧なシミュレーターを作ってみたいです。どのようなシミュレータにするか、企画から制作まで、あくまでも本物にこだわった面白いコンテンツ制作を目指しています。