Combining architecture and film with Cinema 4D image

Combining architecture and film with Cinema 4D 株式会社 アシュラスコープ インスタレーション: 超臨場感プロジェクションマッピング「MEDIARIUM®」の制作現場

「MEDIARIUM®」は、『体感する映像空間』をコンセプトに高精細な映像を空間やオブジェに投影する独特の手法。この「MEDIARIUM®」を提唱する株式会社アシュラスコープインスタレーションの代表 秋葉 哲也氏の根底には建築の知識がある。その知識を生かすツールとしてCinema 4Dが多用されている。どのように活用されているのか、秋葉氏に話を伺った。

 秋葉 哲也 氏

「マッピングをする映像コンテンツを作るのはもちろん、設計図面を作る為にもCinema 4Dを活用しています。どんなプロジェクターをどこに取り付けて、どうやったら一番きれいに投影できるかをCinema 4Dを使ってシミュレーションをします。シミュレーションにはカメラマップ、投影するオブジェクトのUV情報、各プロジェクター機器の特徴、それぞれを考慮して検証し最終的にはCADソフトではなくそのままCinema 4Dで設計図面を起こしていきます。建築の出身者でもCinema 4Dは理解がしやすい。さらには建築を学んだ人が考える映像の考え方とCinema 4Dがマッチしていると思います。」

日本の建築、特に東京の施設では面積が大きく取れない場合が多い。空間に制限がある中でも施設の特徴を存分に活かし普段使いの演出として「MEDIARIUM®」を取り入れられるよう工夫を凝らしている。Cinema 4Dを使ってワンストップでクライアントに企画を提案することもその一つ。

「平面に投影するなら超短焦点プロジェクターでできる。カーブの多い面ならプロジェクターを取り付ける位置で演出方法が変わってくる。様々な案件に合ったプロジェクターを選定、システム設計、造作、図面、映像制作、全てまとめて提案をしています。

例えば、お客さんへのプレゼンで実際に模型を作る場合もありますが、Cinema 4Dで3D空間を作ってプレゼンを行うことが多いです。我々はそのまま3Dデータを活用して映像制作に流れることができます。また、ライブ案件のようにプロジェクターの知識がある現場監督さんばかりではありません。いわゆる街の大工さんとお仕事をすることもあります。そういった方々にプロジェクターの説明をしても理解されにくい。そういう時にCinema 4Dの3D画面を見せると一発で理解してくれる。プロジェクターの排熱の話なども一気にしやすくなり、現場での設置・調整時間を節約できます。」

テレビ東京放送番組「超シリトリアル」をプロジェクションマッピングで演出。秋葉氏は番組のアートコンセプトの段階から参加。美術造形さんに渡すドクロのモデリングデータ、スタジオセットの図面、プロデューサーと確認する映像、全てCinema 4Dを使って同時進行。

店舗や美術館のような室内の投影では、観客はスクリーンを間近で見る。数ミリでも映像とスクリーンとにズレがあると目立ってしまう。また、案件によっては同じ映像を違うプロジェクターやスクリーンへ投影することもある。Cinema 4DとAfter Effectsの連携の良さで修正はもちろん、違うパターンの映像制作を短時間できることも大きなポイントになっている。

「『特別展 ガウディ×井上雄彦 −シンクロする創造の源泉−』では全国各地の会場を巡回しました。会場ごとに設置するプロジェクターの数、位置、スクリーンの変更があります。図面の作成も映像制作もCinema 4Dを使用しているので、それぞれをパズルのように組み合わせ、会場ごとに違う環境でも一貫したイメージで展示に対応できました。」

ガウディの建築特有のゆるやかな曲線を描く壁と床に広がった真っ白な六角形のタイル。そこへ床と壁合わせて12台のプロジェクターを連動させ、ガウディの建築に豊かな色彩が取り込まれた時代を表現する演出が施されている。コンテンツは複数に分割しても成立するように制作されているため、巡回先の会場規模に応じて構成を組み替えることができる。

「Sir Thomas LIPTON TEA HOUSE GINZAでは、一番手前に帆布のスクリーン、次にイギリスの街並みを再現したミニチュア、その後ろにもう一枚スクリーンを置きました。スクリーンが複数あって細やかな演出を求められる時は映像のクオリティと投影の位置に最も気を使います。何度もテスト投影をして修正を行うのですが、ツールをいくつも使っていると修正だけで時間を取られてしまう。After EffectsとCinema 4Dの親和性の良さでクオリティアップに時間を費やすことができました。」

船が好きだった創始者の、愛着ある品々が並ぶインテリアが広がる空間内で、シアター、カーテン、テーブルにプロジェクションマッピングを取り入れた演出。メディア表現を駆使しながらもトラッドな雰囲気をたたえる細やかな演出。

東京・銀座のレストランに導入された「MEDIARIUM®」の一例。

リブという装飾パネルにわん曲を持たせ、投影した映像に立体感を出している。さらに一部のパネルには特殊なラメ塗装を施し微妙な煌きを表現。建築資材の知識を生かした独自の演出も取り入れている。

「僕が建築の出身ということもあり、映像を作るとき真っ先に投影する空間をイメージします。Cinema 4Dを軸として進めていくことで空間と映像の関係をより深めることができるような気がします。作る工程を全て同じツールを使っていれば、建築しか知らなくても空間にあった映像作りが分かってくる。3Dだけでもない、コンポジットだけでもない、2次元グラフィックだけでもない、全ての融合を可能にしたツール。それがCinema 4Dだと思います。」

株式会社アシュラスコープインスタレーション 代表 秋葉哲也 プロフィール

学生時代に思いついた映像空間演出法をベースにプロジェクションマッピング(以下PM)を発案。

2002年よりグラフィックや映像を使った空間デザインプロダクションとしてアシュラスコープをスタート。

2013年に独自技術を集大成した新プロジェクションマッピング技術「MEDIARIUM®(メディアリウム)」を発表。超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)会員として様々な最新技術とのコラボレーションや研究を行う。「MEDIARIUM®」が2015年東京都ベンチャー技術大賞 大賞受賞。

株式会社アシュラスコープインスタレーション ウェブサイト

http://www.projectionmapping.biz/