
A 2D music video in CINEMA 4D. 2Dの手ざわり感がありながら、3Dやシミュレーションでしか作れない複雑な形や動きをCinema 4Dで表現
NETWORKSは、シンセ、ギター、ドラムの少人数編成の3人組インストゥルメンタル・バンド。5年振りに発表されたアルバム『Dynamic Nature』が2015年4月に発売されたばかりです。そのアルバムに収録されている「Sizq」のミュージック・ビデオが制作されました。
今回、そのミュージック・ビデオを担当された吉野耕平監督にお話をお聞きしました。
魅力的な音楽に負けない映像
「Sizq」のミュージック・ビデオは、冬虫夏草になってしまったセミが、新たな生命へとトランスフォームするストーリー。楽曲の起伏や変化に合わせながら、異質なものとしての出発や同質な存在との出会い、そしてさらなる変化を2D的表現で仕上げた作品です。
楽曲が6分以上とミュージック・ビデオとしては長く、インストゥルメンタルのためその映像制作は大きな挑戦です。まず、見た人に動きだけでストーリーを理解してもらわなければなりません。また、音楽もゆったりとしたところが多いため、映像もそれに合わせながらも、飽きさせない工夫も必要でした。
「冒頭や前半に登場する草は、ヘア機能を使って作っています。風にゆったりとたなびく雰囲気を出したかったので、柔らかさやそこにあたる風の強さなど、細かな調整をくり返しました。
その他、ヘアの変形途中をオブジェクトとしても使っています。手作業ではなかなか生み出せない複雑で自由な形を作ることができるため、菌類やキャラクターの身体などさまざまなところで役立ちました。全体の陰影のない2D表現には、マテリアルの発光チャンネルを使っています。」(吉野監督談)
今回、重要であるキャラクターのデザインに吉野氏は苦労したと言います。
「ある程度複雑なフォルムを持ちながら、ある程度の動きが表現できるキャラクターデザインを固めていく段階で悩みました。最初に紙上のスケッチでイメージを徐々に固めつつ、モデリングではまず、さまざまな細部をパーツとして作り、そのあとでそれらを直観的に組み合わせたり、組み替えたりして全体を作っています。動物と菌類の入り交じったような、混沌と秩序がギリギリ同居したような姿にしたいと思いました。」
2Dキャラクターの場合、シンプルなシルエットにしないと、キャラクターが何をやっているかわかりづらくなってしまいます。今回冬虫夏草というキノコと昆虫が融合したキャラクターのためデザインは複雑です。複雑なシルエットをカバーするために、色の構成やパーツのデザインを工夫することで、複雑性とキャラクターの動きを両立させています。キャラクターのセットアップには、Cinema 4Dキャラクターツールであるジョイントツールなどを使われました。
「生きもの関節などを作りやすい『ジョイントツール』と、逆に、あえて関節を無視した奇妙な動きが生みだせる『屈曲』などのツールを組みあわせています。前半の菌類的な動きから、後半の人間的な動きまで、シーンに応じてバランスを変えながら作っていきました。」

二人の作家のコラボレーション
「重要なポイントだった後半の宇宙空間の表現は、別班で映像作家の金子さんに自由に作っていただきました。『2Dの手ざわり感がありながら、3Dやシミュレーションでしか作れない複雑な形や動きを』といったオーダーに、試行錯誤しながら答えていただきました。最後にそれが全体とうまくつながったときには、達成感がありました」
様々なシミュレーションやエフェクトの組み合わせをトライするなど、宇宙の2Dと3Dが混じった新しい空間表現にも苦労したそうです。
吉野氏にとって、Cinema 4Dはどんなツールだったのでしょうか。
「個人的に2Dアニメーションから3Dアニメーションへと世界を広げてくれたソフトとしてとても感謝しています。それまで苦労していた表現が一瞬でできるようになったり、無意識に諦めていた企画やストーリーが描けるようになったりと、ツールが逆にアイデアや創作意欲を刺激してくれた面はかなりあると思います。」
今後はどのような作品作りを考えていますか?
「今後、さらに複雑なキャラクター表現の長編作品を作っていきたいと考えていますが、その際、主にスタッフ確保の点で、このままC4dでいいのか…という心配も少しあります。
Cinema 4Dで本格的なキャラクターアニメーションができるスタッフが、日本ではまだまだ少ないと感じますので、もっと使いやすいツールになって使う人が増えて欲しいですね」
ありがとうございました。
■Webサイト
吉野耕平: http://www.ysnlake.com/
NETWORKS "SIZQ": https://vimeo.com/134945180
NETWORKSについて
http://networks-jp.asia/




