自分たちの作る映像に興味のあるクライアントとだけビジネスをする

独自のスタイルの映像をCinema 4Dで制作

デロイト・トウシュ・トーマツなど、世界的な大企業をクライアントに、映像を制作するOnesal(ワンサル)。日本の「和」からインスピレーションすることも多いといいます。彼らの映像はどのように作れているのか、それをクライアントワークとする方法などをワンサルの代表、ナウエル・サルセドさんに聞きました。

 

理解があるクライアントとだけビジネスをする

─制作しているのは、とても抽象的な表現の映像が多いですね。

こういうスタイルの映像を作るのが得意ですし、そんなスタイルに力を入れています。今後もこうした映像を作ってくつもりです。

 

─そういうスタイルの映像はクライアントに理解してもらうのは難しくないですか?

難しいですね。しかし、私たちは私たちの映像に理解があるクライアントとだけビジネスをするようにしています。私たちの映像が好きでもないクライアントを説得して「これをぜひ、使ってください」とは言いません。

 

─そのような理解のあるクライアントどのように探すのですか?

私たちでハイクオリティな映像を制作し、さまざまなwebサイトに公開しています。また、広告系のイベントなどにも出品しています。それらを見たクライアントが連絡してくれます。

たまに、以前に作った映像を見たクライアントから「これと似た映像が欲しい」とオーダーされることもありますが、実際に制作すると、考えていたのとはまったく違う映像になることもあります。それを「修正してくれ」と言われたとき、抽象的な映像だということを説明するのは難しい。人によって「抽象的」が通じない場合があります。

 

─イメージはどのようにしてクライアントに伝えるのですか?

スタイルフレームを活用しています。静止画ですが、完成形に近いビジュアルを見てもらい、満足していただけたら、アニマティックという、アニメーションのコンテを制作します。絵コンテは作りません。

ビジネスのプロジェクトで、私たちが絵コンテを作ったり、クライアントや代理店からもらう場合もありますが、そのようなプロジェクトは公開していません。あくまでも私たちのメインはブランディングのための映像を制作することです。

 

─スタイルフレームは3Dで作るのですか?

はい。3Dで作ります。Houdiniでシミュレーションして面白い動きとか、面白い形になったら、それをCinema 4D用のレンダリングプラグイン・Octane Renderに移動してレンダリングします。

 

─メインで使ってるのはCinema 4Dだとか。

そうです。Cinema 4Dです。とても使いやすいです。もちろん、他のソフトもたくさん使います。私達のイメージを形にするために必要になったツールもありますが、私は12年くらいCinema 4Dを使っています。

 

─長いですね。

アルゼンチンでモーショングラフィックスを制作していたころは、Cinema 4Dを使うアーティストやデザイナーが多かったんです。8年前に日本に来たとき、Cinema 4Dを使っている人は少なかったですが、今ではずいぶん増えました。変わりつつあることを感じますし、それは良いことだと思います。

 

─日本ではひとつのソフトしか使わない、というケースが多いのですが、どのようにソフトを使い分けていますか?

もちろん、ひとつのソフトだけで制作することもあります。パーティクルがすごく多いとき、Houdiniで制作したものをCinema 4Dに持ってくる場合もあります。

多くのソフトを使おうとすると覚えるのに時間もかかりますし、Houdiniは誰でも使えるわけじゃありません。だから、バランスを上手に取りながらいろいろなソフトを使うのが理想でしょう。でも、Cinema 4Dひとつで行くのが一番良いと思いますよ(笑)。

 

─Cinema 4Dとはどこで出会ったのですか?

勤めた会社がどこもCinema 4Dを使っていました。使ってみるとすごく簡単だと思いました。時間もかかりません。私がやりたいことはCinema 4Dがあればできます。

 

─Cinema 4Dでよく使う機能はなんですか?

MoGraphとダイナミクスはよく使いますね。あと、ソフトボディは好きです。以前は計算に時間がかかっていましたが、今は簡単になって計算も早くなりました。

 

─最近、3D業界でワンサルさんの社名をよく聞きます。

それは嬉しいですね。でも、良い評判なら嬉しいですが、そうでないなら何とも言えません(笑)。

 

─もちろん、良い評判です(笑)。ワンサルさんはどのように制作しているかが気になる、という声をよく聞きます。シミュレーションが多いのですか?

そうですね。Cinema 4D用のプラグイン、X-particlesを使うこともありますし、HoudiniやMarvelous designer、Realflowを使うこともあります。Marvelous designerでクロスシミュレーションをするとすごく早いです。

 

─シミュレーションだと、自分が思っていたのと一致しない、ということはありませんか?

ありますね。90%がそうです。でも、それもそれなりに面白いです。出来たものが違っていても、良いものは良いですし、そこからアイデアが出てくることもあります。

これは私個人の考えですが、私は制作中にアイデアが出ることがこの仕事の楽しさだと思っています。

 

日本にいることがメリットになる

─世界最大の会計事務所であるデロイト(デロイト・トウシュ・トーマツ)をクライアントとしていますが、ここでもシミュレーションを使っている?

いっぱい使っています。アニメーションもやりますし、やらないといけない場合もありますが、やはりシミュレーションは私たちのスタイル。そこに力を入れたいと思っています。

 

─デロイトの映像はどれもモーションがすごく気持ちいいんですが、動きに気を付けていることはありますか?

いろんなショットを自分ひとりで作りましたが、あまり深くは考えていません。いろいろとトライしてみて、リアルなオブジェクトの虫や花が意外な動きをしたら面白いなと思うくらいですね。シミュレーションをかけてみて良い感じになればそれでいい。気持ち良さがとても大事だと思っています。

 

─花で有名なニコライ・バーグマンの映像もとても素敵です。クライアントは日本が多いですか?

クライアントは海外が多いです。外国人が立ち上げた会社ですし、外国人の社員も多い。そのためあまり知られていないし、外国人ということで信頼してもらえない場合もあります。

 

─海外のクライアントの方が付き合いやすいですか?

いや、海外も日本も関係はありません。今後は日本からの依頼が多くなると思いますし、そのための準備もしていきたいと思っています。

私たちはインターナショナルな小さな会社です。日本を拠点にしているということがワンサルのアイディンティティにもなっています。そのことに海外のクライアントやデザイナーが面白がってくれます。事実、海外の広告際で面白い商談ができました。日本にいるメリットはたくさんあります。

 

─海外とビジネスに不便はありませんか?

まったくありませんね。打ち合わせはSkypeや会議システムでできます。たまに電話もします(笑)。また、クライアントではなく、海外のデザイナーとコラボレーションすることも多いです。今はアルゼンチンとイタリアのフリーランスとコラボレーションしています。

 

─そもそも、日本にはなぜ、来られたのですか?

日本の文化が気に入って、興味を持っていたので、東京に住んでみたいと強く思っていました。

私が知っていたアルゼンチンとは社会や人間関係など、いろんな場面で違います。それと和食も好きでした(笑)。

日本の「和」のテイスト、美しさのバランスがとてもいい。日本の「和」は私の映像に何らかの形で表現されている思います。ただし、私の「和」は外国人が感じる「和」かもしれません。

でも、作りたいのは「和」です。

私の会社はスタッフが13人ほどいますが、ほとんどが外国人です。その外国人が日本に来て驚いたこと、楽しいと思ったことを取り入れながら映像を作ると、さらに面白い作品になるのではないかと思っています。

 

─参考にしているのとかはありますか?

私は個人のデザイナーやフォトグラファー、小さなデザイン会社のInstagramをフォローしているのですが、彼らの写真作品はとても参考になります。花やジュエリー、彫刻、建物、そのようなものが参考になります。CG作品は参考にしないようにしています。

 

─気になるアーティストなどはCG以外のジャンルですか?

もちろん、大好きなCGアーティスはたくさんいます。でも、参考にしないようにしています。見るとインプットされるかもしれませんが、真似をしないようにしています。

でも、ManvsMachineとかMore and moreSehsuchtfoam Studio、などはすごく好きです。

 

─日本ではどうでしょう?

4回くらいコラボレーションしている豊田遼吾さん。彼の作品は好きです。

あと、WOWとかTANGRAM。アートディレクションのスタイルがすごくいいんです。いつかはこうなりたいと思います。多くのスタジオやアーティスがCinema 4Dを使っています。

PROFILE

Onesal

アルゼンチン出身のナウエル・サルセド(Nahuel Salcedo)が東京に設立したCGプロダクション。デザインとモーショングラフィックスを得意とする。

ナウエル・サルセド(Nahuel Salcedo)

アルゼンチンのブエノスアイレスにある、

2Veinte Design & Motion Graphics Production Company

などでモーショングラフィックス制作に5年ほど従事。その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)に留学。2年間デザインを学ぶ。卒業後はロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルスなど、ハイレベルなモーショングラフィックススタジオが集中している都市に引っ越すのではなく、東京に留まり、欧米スタイルのスタジオを立ち上げた。

 

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