2Dのタッチで伝える動物の魅力

上野動物園webサイト『UENO PLANET』のCGアニメーションを制作

海外からも注目されているプロジェクションマッピングアーティストの冨吉剣人氏。
学生の頃から作品をCinema 4Dで制作していたという。

恩賜上野動物園特設webサイト『UENO PLANET』でCGアニメーションを担当。日本デザインセンターの三澤遥氏が制作したパンフレットのメインビジュアルを3Dで再現した。そのハイレベルなクオリティに高い評価を得ている。

 

インタビュー●大橋博之

 

Cinema 4Dは高根の花だった

冨吉剣人氏は、FLIGHTGRAFというチームで活躍するプロジェクションマッピングアーティストだ。

この、FLIGHTGRAFはデザイン・ビジュアルアート、ディレクションを担当する冨吉剣人氏と、サウンドデザインを担当する生水真人氏の2人で構成されたユニットである。ちなみに生水氏は冨吉氏の高校時代の先輩でバンドメンバー。今はドイツのハンブルクを拠点として活動している。

 

冨吉氏は高校で建築を、大学でプロダクトデザインを学んだ。学生時代からすでにCinema 4Dを活用していたという。

「学生時代、奇麗なレンダリングをしている人がいて、『ソフトは何を使っているのですか?』と訊ねると『Cinema 4Dだよ』と教えてくれたことで興味を持ったのが最初です。学生にとってはある国産の3DCGソフトが一番、手に入りやすい3Dソフトでしたが、その人が制作した作品の雰囲気はそのソフトでは作れませんでした。でも、当時は学生が個人でCinema 4Dを購入するには高すぎて高根の花。なので、社会人になったら最初のボーナスで買おうと決めていました(笑)」

卒業後、電機メーカーに就職。プロダクトデザイナーとなる。会社でもCinema 4Dを導入していたが、プライベートでもCinema 4Dを使って自主製作活動を行っていた。公私ともにCinema 4Dにどっぷり浸かり、スキルを磨いた。

 

冨吉氏が映像に関わるようになったのは、2013年に開催された逗子メディアアートフェスティバルにおいて、プロジェクションマッピングの国際コンペティションに自主製作作品を応募したことによる。その、Cinema 4Dで制作した作品『真夜中の博物館』で見事、グランプリを受賞した。

「建築物に映像を投影するプロジェクションマッピングという新しい芸術表現に新鮮さを感じました。そこには私が高校で建築を学んだことも影響しています。賞を頂いたことから、『こんな映像は作れないか』というお話を頂くようになりました。私自身は映像畑の人間ではないのに、映像を作れる人だと思われて(笑)」

しかし、映像、特にプロジェクションマッピングにもっと深く携わりたいと思うようになり、会社を退社し2015年に独立した。

 

UENO PLANETへ参加

冨吉氏が関わったプロジェクトに、恩賜上野動物園特設webサイト『UENO PLANET』のCGアニメーションがある。元々、日本デザインセンターの三澤遥氏がアートディレクションを担当した限定パンフレットがあり、特別webサイト用を制作するさい、そのパンフレットのメインビジュアルを3Dで作れないか、という依頼からスタートした。

「みんなが知らないであろう、動物の姿や生態といった動物の魅力を伝えることが目的でした」

メインビジュアルは魚眼レンズで捉えたような惑星があり、そこにさまざまな動物たちが点在している。このまま立体にすればいい。簡単に作れるだろうと思った。しかし──

「3Dぽく描かれていますが2Dなので、2Dならではの描き方、デフォルメがすごくされているんです。そのため、そのまま描いても3Dにはなりません。それでも私が表現したかったのは、このメインビジュアルをそのままに3Dで再現し、そのうえで動物を動かすことでした」

表と裏しかないメインビジュアルから見えない部分を創り上げなければならない難しさがありつつも、魚眼レンズぽさと、メインビジュアル通りの色合い、世界観を再現することにこだわった。

 

動物は30体くらい作った

制作ではまず、地球を作り、その上に池や岩を配置し、草木を乗せ、最後に動物を置いていった。草木や動物は描写が細かいうえに数が多く、制作に時間を要した。

「動物は30体くらいは作ったと思います。動かしたいというオーダーがあり、全部の動物にリグを入れて動かせるようにしています」

動物の動画をたくさん見て参考にした。しかし、そうして苦労して制作して動かしたのにもかかわらず上野動物園から「動きが違う」とリテイク指示が出た。

「水中のアシカはそんなに足は開いていないとか、アジアゾウの耳はもう少し小さいとか細かい指示がありました。特にトラは岩を飛び移らせダイナミックに動かし、自分としては完璧にできたと自信があったのですが、全カット。動物のプロが見ると不自然に思えるというのが理由です。他にも最終的には何体かは動かさなくてもいい、ということになり、まさに骨折り損となりました(笑)」

そのため、動物にはかなり詳しくなったと笑う。

 

レンダリングは、セルシェーダと発光チャンネルのマテリアルを使ってフラットに見せた。

「多くの人からSketch and Toonで作ったのだろうと言われましたが、Sketch and Toonだけではこうはなりませんでした。そこが難しいところのひとつでした」

しかし、セルシェーダではただ均一にレンダリングされる。また、輪郭を描こうとするとオブジェクトの輪郭は出ても、それ以外の線は出ない。さらにポリゴンの線を強調しようとすると真っ黒になってしまう。

「そのため、テクスチャでひとつひとつ線を描くという地獄の作業をやりました(笑)」

テクスチャでUV展開し、テクスチャでキャラクターの線を描いた。しかも、細い輪郭線を作るため、8Kでレンダリングしてから縮小した。

動物の線は3つのパスを合成している。動物に描いたテクスチャの線、Sketch and Toonの線、セルシェーダの線、この3つを重ねて一体ができているという。

「そのような作業を行っているので、レンダリングをしてまとめる、という作業にとてつもない時間がかかりました」

そのため、一か月でできるだろうと思っていたのが、一か月ちょっとオーバーしてしまったという。

 

Cinema 4Dならいろんな方法を試すことができる

Cinema 4Dを使っていてよいところは、制作のために試行錯誤できる時間を多く取れるところだという。

「MoGraphがすごくよくて、惑星にある中心の木はMoGraphのエフェクタで上に持ち上げて、端っこの部分は外に出ているので下げています。そんな面倒なことをしています。それで魚眼ぽく見せるという独特な効果を作りましたが、そのような複雑な作業でもCinema 4Dを使うことで試行錯誤をする時間を取ることができました」

試行錯誤をする時間を取ることができたのには冨吉氏がCinema 4Dの扱いに慣れていた、ということもあるが、Cinema 4Dなら試してみてダメなら別の方法にトライしたり、いろんな方法を試すことがすぐできたということも理由としてある。

「Cinema 4Dは使いやすいソフトだと思います。それに、リグを入れるステップが明快でわかりやすい。大量に入れる必要があったので、とても助かりました。そのリグ入れにはライセンス更新時におまけでついてきたチュートリアルがとても役に立ちました」

 

冨吉が制作した『UENO PLANET』のCGは高い評価を得ているそうだ。今は海外からのオファーによるプロジェクションマッピングの制作に多忙な日々。また、そのようなクライアントワークだけでなく、FLIGHTGRAFとして海外のコンペティションに積極的にトライして行く考えだ。

「アート活動は自分の中でとても大切にしています。今後はクライアントワークだけでなく、FLIGHTGRAFの動画を作ったり、自分が作りたいものを作っていく時間を多く取りたい。自分たちのアイコンを海外にもっと発信したい。困難に挑戦することが僕たちの目標です。ひとつひとつのハードルを越えていくことが重要だと考えています」

 

恩賜上野動物園特設webサイト『UENO PLANET

https://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/planet/

企画・デザイン:日本デザインセンター 三澤デザイン研究室

映像:FLIGHTGRAF

音楽:Noah

映像編集:黒田教裕

CL:東京都恩賜上野動物園

 

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