キャラクターやメカ、背景まですべてのモデリングを2ヶ月という短期間で、 一人で行うという要求に答えたCINEMA 4D。
サンライズ 荻窪スタジオが制作した男3人、女2人、ネコ1 匹の監獄脱走を描いたSF 密室脱出劇「ノラゲキ!」は、バンダイビジュアルのOVA上映イベント「ANIME FES.“VS” バトル3」の一作品として1月に劇場公開され、3 月25 日にDVD とBlu-ray がリリースされる。監督は「鉄コン筋クリート」で演出を務めた安藤裕章氏、脚本は「FREEDOM」の佐藤大氏が担当。
今回、ほぼ全編にわたり、CG で制作されているが、その見た目は、いわゆるリアルなフルCG ではなく、作画アニメを感じさせる作品に仕上がっている。
トゥーンレンダリングは、形状によりラインや影の出かたが大きく変わるため、モデリングが非常に重要なポイント。モデリングを担当した山田裕城氏はCINEMA 4D を使い、そのすべてを手がけた。なぜCINEMA 4D を使ったのだろうか?
株式会社サンライズ 荻窪スタジオ
モデリング
山田裕城
「私がCINEMA 4Dを使っているのは、十分に慣れてしまったという理由も大きいのですが、ポリゴンでトゥーンに対応したモデリングが早いという実感を持っているからです。最終的には他ソフトに出力することになりますが、セルレンダリングで描きたいラインは基本的には同じです。エッジや交差や折り返し、角度によって見え隠れする線の関係などに注意を払いながらモデリングを行います。
特に作業エディタ上にラインを表示する機能やインタラクティブレンダーで確認しながら柔軟に修正できるところが、モニターでチェックを受ける際にも重宝しました。また場合によってキャラクターやメカ、背景など様々なモデルが必要になります。CINEMA 4Dは半手続き型で作業できる構造物と、サブディビジョンを利用した有機的なポリゴンモデリングのどちらにも対応しやすかったと思います」
アニメーションは、別の3D ソフトで行うため、細かい表情などはアニメーターが作業している。しかし、アニメーターもCINEMA 4D を使うケースがあったという。
「 アニメーターの方が、一部モーフターゲットの制作にCINEMA 4D を使用したケースもありました。顔の表情をいくつか作らなければならないときに、CINEMA 4D のモーフが非常に便利でした。CINEMA 4D は、モーフが50% の状態でも、ポイント編集ができるのです。 たとえば、 半分目を閉じた状態を使って、別の表情を出したい時に使ったりします。 あと、100% 以上の値やマイナスの値のモーフを利用して、表情を作ることもあります。
またCINEMA 4Dでは、ターゲット型ではなくオブジェクト自体にモーフを追加していく方式なので、見た目での編集が直感的だと感じます。複数のターゲットを混ぜ合わせて一方だけを編集する、などという場合も容易に対応できました」
今回、モデリングとアニメーションで使う3D ソフトが異なっている。こうした場合、データのやり取りにより、修正などがあれば手間のかかる作業だ。通常、モデリングソフトとアニメーションソフトが分かれていると、モデリングしたデータを書き出し、別ソフトでセットアップとアニメーションを適用する。形状に問題があれば、もう一度、モデリングソフトに戻ることになり、ワークフローとしては煩雑になってしまう。
セットアップのスタッフやアニメーターが吸収してくれていた部分も多いですが、これまでの経験と長く一緒にやってこれたスタッフへの信頼が欠かせない。
「ラインを出すためと形状のためにシャープエッジとサブディビジョンのエッジウェイトを多用しました。服や顔のしわを作ったり、装飾品の硬い形状を出すために利用しました。ポリゴン形状を簡素化し、線も意図したとおりに設定できて、大変便利です。これらの情報はCOLLADA形式で受け渡しを行っています。マテリアル分けやハードエッジ情報、軸などがほぼ再現されるようになりました」
背景の制作では、主に二つの方法で行なわれた。カットに合わせたモデルを作成した後に、美術スタッフがカメラマップ用のテクスチャを描くケースと、美術スタッフが背景を先に描いてから、モデリングを行うケースだ。この作業では、3D ペイントのBodyPaint 3D 機能が多用されている。
「本当は、レイアウトして、こちらで3D のあたりを出してから、背景を描いてもらうのがいいのですが、時間がないときは先に描かれた背景に合わせてマップ用のモデルを作成しました。カメラから見たアングルで、モデルの調整がしやすいというのがあります。歪みがある壁も、デフォーマで変形させながら調整できます。
後から絵の辻褄を合わせる作業はかなり面倒ですが、プロジェクションしながらモデリングすることでうまく対応できました。CINEMA 4Dのカメラマップは他ソフトと比べてもシンプルに使える感じがします。いくつかのカットはレンダリングまで全てCINEMA 4Dで行っています。
宇宙ステーションや回転するカーゴルームのテクスチャー作成にはBodyPaint3Dを使っています。その際に美術テクスチャーを発注するのですが、UVの展開図を渡しても、どこがどこのパーツか分かりづらく、全体像の把握も困難です。こうした場面でもカメラマップ視点から描いてもらい、UV焼付け、展開を行き来して、ゆがみやつなぎ目をBodyPaintで修正するという作業を行いました」
『ノラゲキ!』のプロジェクトで、CINEMA 4D を使ってよかった部分はどこにあるのだろうか。
「CINEMA 4Dの利点は絵の曖昧さに対してレイアウト視点からの作業のしやすさにあると思います。
一方で前述のモデリングで、プロダクトとキャラクターの両方に対応できたと言いましたが、それぞれに特化した別のソフトとは替えの効かない良さがあります。CINEMA 4Dで厳密に製図されたものを作ろうとすると、若干精度が足りませんし、スカルプトモデリングのようなアプローチにも羨ましく感じる部分はあります。悪く言ってしまえばどっちつかずな位置にあるとも取れますが、使っていくと柔軟ないいとこ取りができる、という印象です。
そこが作業していて楽しいと思える手軽さであり、また人に勧める場合に説明をしづらい部分でもあります」
「ぜひ、アニメーターの方の細かやかなアニメーションを見て欲しいです。動きがいいとモデルがよく見えるんですね。動かしている人が指先までに神経を使ってくれているというのが、すごくわかります。
また、造形で言えば、平面だけにとらわれないにしています。フィギュアのように作っているわけではいので、そういったところを見ていただければと思います」
大友克洋監督の「スチームボーイ」の制作ために、2000 年にスタジオとして発足。その後も、「FREEDOM」、「いばらの王 -King of Thorn-」などCG を使ったアニメーション制作に意欲的に発表している。
現在同社では、3DCGデザイナーを募集している。やる気や粘り強さのある若い方を募集しているとのこと。興味を持たれた方は、ぜひ下記の募集要項をご覧ください。
http://www.sunrise-inc.co.jp/recruit/staff_cg2.html
『ノラゲキ!』について男3人、女2人、ネコ1 匹がどこかもわからない収監施設からの脱走を描いたSF 密室脱出劇「ノラゲキ!」は、バンダイビジュアルのOVA上映イベント「ANIME FES.“VS” バトル3」の一作品として1月にイベント上映された。また、4月7 日にDVD & Blu-ray がリリースされた。監督は「鉄コン筋クリート」で演出を務めた安藤裕章氏、脚本は「交響詩篇エウレカセブン」の佐藤大氏が担当している。
http://dbeat.bandaivisual.co.jp/norageki/
使用グレード: Studio